コラム
『古九谷:世界的に稀有な江戸時代初期の九谷焼の色彩とデザイン』
『古九谷:世界的に稀有な江戸時代初期の九谷焼の色彩とデザイン』
2024.06.03 #九谷焼の絵柄

九谷焼の伝統画風 ①古九谷様式

九谷焼 の古九谷様式は、特に重厚で力強い表現力を持つ独特の様式で、江戸時代初期に発展しました。
九谷焼の歴史において、古九谷は特に重要な位置を占めており、その美しさと表現力の高さは多くの作家や愛好者にリスペクトされ続けています。

歴史的背景:
九谷焼の起源は、17世紀中頃に遡ります。加賀藩主前田利常が狩野派の画家・久隅守景の指導の下、後藤才次郎を中心に創り上げたものが古九谷様式と言われています。この時期、九谷村(現在の石川県加賀市)に磁器の窯が築かれ、加賀藩が文化を奨励する一環として、陶器の制作が盛んになりました。古九谷様式は、戦国時代の激動を経た江戸初期の時代背景を反映し、豪快かつ力強いデザインが特徴です。

九谷焼 古九谷 色絵牡丹文鉢

技法と特徴:
古九谷様式の最大の特徴は、その鮮やかな五彩(青、黄、赤、紫、紺青)にあります。これらの色は現在でも九谷五彩と言われ、大切にされている色彩です。この五彩を用いて焼き物に生命を与え、絵画的な表現力を持たせました。自然の中の草花や山水をモチーフにした大胆な図柄は、力強い骨描きと相まって、作品に強烈な存在感をもたらしています。また、赤を使わずに青、黄、紫、紺青の4色を用いて塗り埋める「青手」と呼ばれるスタイルは、他の九谷焼とは一線を画す独特な技法です。

九谷焼 古九谷 色絵菊花文鉢

古九谷様式の影響:
古九谷様式は、その後の九谷焼や日本の陶磁器全体に多大な影響を与えました。
特に、その大胆なデザインと鮮やかな色彩は、後世の作家たちにとって永遠のインスピレーションとなっています。昭和20年代には、「古九谷」論争が起こり、その作品が実際には有田で作られたものであるとの説が提唱されましたが、この長年に渡る論争も、古九谷が持つ魅力と影響力の証明でもあります。

現代の九谷焼作家たちにとって、古九谷様式は依然として大きな存在です。その表現技法や美的感覚は、今もなお多くの作品に受け継がれており、現代の作品においてもその影響を見ることができます。特に、力強いデザインと鮮やかな色彩は、現代の九谷焼においても欠かせない要素となっています。

九谷焼 古九谷 色絵鶴かるた文平鉢

まとめ:
古九谷様式は、九谷焼を象徴する様式であり、その魅力は今も多くの人々を引きつけ続けています。
石川県立美術館に古九谷作品の収蔵がありますので、お近くにいらした時にご覧になってみてください。

石川県立美術館:https://www.ishibi.pref.ishikawa.jp/

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