コラム
九谷焼:永楽和全がもたらした加賀百万石豪華絢爛の象徴「赤地金蘭手」
九谷焼:永楽和全がもたらした加賀百万石豪華絢爛の象徴「赤地金蘭手」
2024.07.01 #九谷焼の絵柄

【九谷焼の伝統画風 ⑥永楽風】

永楽風は、 九谷焼 の中でも非常に重要な画風で、京焼の名工・永楽和全によって確立されました。このスタイルは、赤地に金彩を施す「金襴手(きんらんで)」を特徴とし、九谷焼の美的価値を高める一翼を担っています。加賀百万石をも表現するその豪華絢爛な美しさは、日本国内外の陶芸界に大きな影響を与え続けています。

九谷焼 永楽

歴史的背景

永楽和全(1823-1896)は、文政6年に京都で生まれました。永楽家は代々京焼の名窯として知られ、和全もまたその伝統を受け継ぎました。1865年、加賀藩に招聘され、九谷焼の復興に尽力しました。当時、九谷焼は一度衰退の危機にあり、和全はその再興を目的に招かれました。和全が活動した九谷本窯では、短期間でありながらも数多くの名作が生み出されました。永楽風の登場は、九谷焼の歴史に新たな章を開き、後の作品に多大な影響を与えました。

 

 

技法と特徴

永楽風の技法は、赤地に金彩を施す「金襴手」が中心です。この技法は、豪華で洗練された美しさを持ち、龍や鳳凰、唐草文、瓔珞文といった伝統的なモチーフが頻繁に使用されます。和全は、陶磁器の素地を改良し、滑らかで美しい仕上がりを追求しました。また、彼は京焼の技術と九谷焼の伝統を融合させ、新しいデザインや色彩を導入しました。この技術革新により、九谷焼は新たな発展を遂げ、その作品は国内外で高く評価されました。

永楽風のもう一つの特徴は、独自の色彩感覚と緻密な描写です。和全は、古九谷や江戸時代の他の様式に見られる伝統的な色彩とは異なる、柔らかく温かみのある色調を実現しました。これにより、永楽風は他の九谷焼と一線を画す個性的なスタイルとなりました。また、和全の作品には複数回の焼成が施され、色彩の深みや輝きが一層引き立てられています。

 

九谷焼 永楽

赤地金襴手の発色効果

永楽風の金襴手技法において、赤を下地として使用することで、金彩の発色が一層鮮やかで深みのあるものになります。この技法は、温かみのある赤い反射面を作り出し、焼成後に金がより豊かで輝きを持つように見えるため、陶磁器の制作において歴史的に利用されてきました。赤い下地と金彩のコントラストにより、作品に豪華さと印象的な視覚効果が生まれます。この相互作用は、焼成工程中に赤と金が調和し、金の輝きが維持されやすくなるという特徴があります。この技術的な知見は、陶磁器の装飾において非常に重要であり、永楽風の作品が持つ豪華絢爛さを支える要素の一つです。

 

九谷焼 永楽

現代 九谷焼 への影響

永楽和全が九谷本窯で制作した作品は、その時代の陶工たちにとって模範となり、その後の九谷焼の発展に大きく寄与しました。和全の導入した技術やデザインは、九谷焼の美的価値をさらに高め、現在も多くの陶工たちに受け継がれています。

また、永楽風の作品は、特に輸出用の九谷焼として人気が高まりました。永楽和全の作品は、単なる装飾品としてだけでなく、陶磁器の芸術作品としても広く認められ、その評価は今もなお高まっています。

まとめ

永楽和全が九谷焼にもたらしてくれた永楽風の技法とデザインは、九谷焼の美しさと技術の高さを象徴し、現在も多くの陶工たちに受け継がれています。決して古くさくなく、今でもカッコいいのです。

石川県立美術館には金襴手の他の技法を用いた永楽和全の作品が所蔵されています。お近くに行かれたらご覧になって見てはいかがでしょうか。

・石川県立美術館:永楽和全所蔵作品

https://www.ishibi.pref.ishikawa.jp/collection/index.php?app=shiryo&mode=list&list_id=94397151

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