コラム
九谷焼 三代徳田八十吉の彩釉:新しい表現を追い求め、色彩と技法に込められた情熱
九谷焼 三代徳田八十吉の彩釉:新しい表現を追い求め、色彩と技法に込められた情熱
2024.07.08 #九谷焼の絵柄

【現代九谷の画風 ①彩釉】

九谷焼 彩釉(さいゆう)は、現代九谷の中でも特に印象的で斬新な技法で生み出され、明治以降に大きく発展しました。この技法は、九谷焼の伝統的な五彩を用い、赤、緑、黄、紫、紺青の鮮やかな色彩で器全体を覆い、焼成することで独自のグラデーション効果を生み出します。九谷焼ならではの絵の具を用いた深みと透明感がある美しい仕上がりは、彩釉の最大の魅力です。

九谷焼 三代 徳田八十吉

歴史的背景

彩釉の技法は、九谷焼の伝統を受け継ぎつつも、より現代的な美意識に応えるために発展しました。重要無形文化財(人間国宝)にも指定された三代徳田八十吉(1907-1997)は、この技法の確立者として広く知られています。三代徳田八十吉先生は、九谷焼の五彩を駆使しつつ、新たな色彩の表現を追求し、彩釉技法を独自に進化させました。

三代徳田八十吉先生の生涯を通じた作品制作は、九谷焼の技術と美学を一層高めるものとなりました。特に「燿彩(ようさい)」シリーズは、九谷焼の伝統的な色彩を基盤にしながらも、色彩の層を重ねることで、まるで光が内部から溢れ出るかのような透明感を持つ作品をとなっています。これは、従来の九谷焼には見られなかった新しい表現であり、国内外で高い評価を受けました。その深い色合いは、九谷焼の印象に革新をもたらしたとされており、その美しさは今日でも多くの人々を魅了し続けています。

技法と特徴

彩釉技法は、 九谷焼 に特有の五彩の釉薬を使用し、器全体に鮮やかな色彩を施すものです。この技法は、複数回の焼成を経ることで、釉薬が溶けてガラス質の層を形成し、器の表面に深みと透明感を与えます。特に「燿彩」のスタイルは、色彩のグラデーションが際立つ作品となっています。

燿彩の特徴的な要素は、色彩の重層的な使い方にあります。釉薬を重ねることで色合いに深みが生まれ、また、釉薬が焼成過程で流動し、自然なグラデーションが生じることで、器の表面に独特の表情をもたらします。三代は、この技法を駆使し、九谷焼に新たな美しさと深みを与える作品を数多く作り出しました。

三代徳田八十吉先生は、初代八十吉が解読した古九谷の釉薬調合法を基にしつつ、独自の技法を開発しました。三代は、焼成技術の進歩を活用し、釉薬の色数を百数十色にまで広げました。この中には透明感あふれる清明な色彩が含まれており、色彩の階調が非常に豊かであることが特徴です。特に、釉薬を重ねた色彩の境界が高温で溶け合い、美しいグラデーションを形成する技法は、九谷焼の歴史上初めてのものでした 。

また、三代八十吉は、自身が使用する色彩に対して非常に細かい調整を行い、その結果200種類以上の中間色を生み出しました。これらの色彩は、電気窯を使用した1000度を超える高温で焼成され、美しい色合いと深いグラデーションを生み出します 。

三代のこうした絵の具の調合に対する情熱と研究は、九谷焼に新しい地平を切り開きました。

九谷焼 三代 徳田八十吉

現代の 九谷焼 への影響

彩釉の技法は、 九谷焼 の伝統を尊重しつつも、新たな表現の可能性に挑戦するための基盤となっています。

まとめ

彩釉は、九谷焼の伝統を尊重しながらも、新しい時代に合った美しさを追求するための技法として生み出されました。三代徳田八十吉先生が確立したこの技法は、九谷焼に新たな表現の幅をもたらし、今もなおその影響を受けた作品が多く制作されています。彩釉は、従来の枠に捉われずに挑戦し、未来を切り開くための重要な指針であり、その美しさと精神は九谷に永遠に受け継がれていきます。

 

三代徳田八十吉先生の作品は石川県立美術館や所蔵されています。また、石川県小松市には三代の生家を美術館に改装した錦窯美術館にも作品が所蔵されています。

・石川県立美術館 三代徳田八十吉作品 https://www.ishibi.pref.ishikawa.jp/collection/index.php?app=shiryo&mode=list&lang=&list_id=94408142&act_type=page_change&page=1

・石川県小松市立 錦窯美術館 https://komatsu-museum.jp/nishikigama/

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