コラム
九谷焼 釉裏金彩:突き詰めた技術が生み出す奥深い金の表情と品格
九谷焼 釉裏金彩:突き詰めた技術が生み出す奥深い金の表情と品格
2024.07.15 #九谷焼の絵柄

【現代九谷の画風 ②釉裏金彩】

九谷焼 釉裏金彩(ゆうりきんさい)は、九谷焼において最も洗練された技法の一つであり、その豪華さと品格ある美しさは多くの人々を魅了しています。この技法では、金粉や金箔を磁器の表面に貼り、その上に透明釉をかけて焼成します。これにより、金が剥がれにくくなるだけでなく、しっとりとした質感と品の良い輝きが生まれるのです。

九谷焼

 

九谷焼

歴史的背景

釉裏金彩の技法は、中国の宋代や明代に起源を持つ古典的な技術で、日本には江戸時代に伝わりました。当時の日本の陶工たちは、この技法を研究し、伊万里焼や九谷焼でその表現を発展させました。しかし、現代の釉裏金彩技法が確立されたのは、昭和30年代に金沢の陶芸家、竹田有恒氏によってです。伝統的な技法を現代に適応させ、金箔や金粉を用いた高度な装飾技法を生み出しました。

釉裏金彩は、特に金沢を中心とした加賀地方で発展し、高度な技術を持つ陶工たちによって精緻な作品が作られてきました。この技法は、磁器に新たな命を吹き込み、伝統的な美と現代的な感性が融合した作品を生み出しています。

 

技法と特徴

釉裏金彩の技法は非常に精緻で、何段階もの工程を経て完成します。まず、素焼きした磁器の表面に金箔や金粉を貼り付け、その上から透明釉をかけます。次に、低温で焼成することで、釉薬が溶けてガラス質の層を形成し、金箔や金粉が釉薬に保護されます。この工程により、金の輝きが釉薬の下から柔らかく光り、深みのある美しさを放つ効果を出します。

さらに、釉裏金彩の技法では、金箔の厚さや貼り方、焼成時の温度管理が重要な要素となります。これらの要素が作品の最終的な色調や質感に大きな影響を与えるため、陶工たちはこれらの工程に細心の注意を払います。金箔を貼る際の微妙な加減や釉薬の濃淡の調整は、熟練の技と長年の経験を必要とし、その結果として生まれる作品は、まるで静かに輝く金の宝石のような品格を持っています。

 

九谷焼

代表的な作家と作品

釉裏金彩の技法を極めた陶芸家として、重要無形文化財(人間国宝)に指定された吉田美統(よした みのり)先生が挙げられます。石川県小松市の錦山窯の三代当主であり、釉裏金彩の第一人者として知られています。吉田美統先生の作品は、釉裏金彩の技法を駆使し、金箔と釉薬の組み合わせによって生まれる深みのある色彩と上品な輝きを持っています。

吉田美統先生は、金箔を用いた繊細な作業と、釉薬の濃淡を巧みに操り、多くの優れた作品を生み出しています。金箔の濃淡や釉薬の色調が見事に調和し、優美な表現が特徴です。特に、釉裏金彩の技法によって生まれる微妙な色合いや光の反射が、見る者に静かな感動を与えます。

まとめ

釉裏金彩は、九谷焼の伝統を受け継ぎながらも、新しい時代に合った美しさを追求した高度な技法です。その美しさは、金の輝きと透明釉の調和によって生まれる品格と静けさにあります。吉田美統先生の作品は、その最高峰を示すものであり、多くの人々に釉裏金彩の魅力を伝え続けています。釉裏金彩は、これからも九谷焼の一つの象徴として、その価値を高め続けるでしょう。

・石川県立美術館 吉田美統所蔵作品  https://www.ishibi.pref.ishikawa.jp/collection/index.php?app=shiryo&mode=list&list_id=76142037

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