コラム
九谷焼 青粒:立体的な点描で文様を生み出す、細密な九谷独特の美
九谷焼 青粒:立体的な点描で文様を生み出す、細密な九谷独特の美
2024.07.29 #九谷焼の絵柄

【現代九谷の画風 ④青粒】

九谷焼 青粒(あおちぶ)は、九谷焼の中でも特に緻密な画風であり、高度な集中力の継続を要する手法で、独自の美しさを誇る技法です。この技法は、大正時代に広まった比較的新しい技法であり、極小の緑(青)色の粒を盛絵具で丁寧に並べることで、独特の鮫肌のような質感を生み出します。その均一性と立体感は、見る者に感動を与え、九谷焼の中でも特別な存在感を放っています。

九谷焼 二代仲田錦玉

歴史的背景

青粒技法は、大正時代に九谷焼の技法として確立されました。当初、この技法は作品の装飾アクセントとして使用されていましたが、その後、二代仲田錦玉先生が青粒技法を追求し、作品全体に青粒を施すことで、青粒が主役となる独自の画風を確立しました。特に「渦打ち」と呼ばれる粒を密集して打つ技法は、立体感のある渦模様を生み出し、その美しさで多くの人々を魅了しました。

この技法が生まれた背景には、日本が急速に近代化し、西洋文化が強く影響を与えた時期にあったことが挙げられます。伝統工芸においても新しい表現方法が求められる中で、青粒技法は九谷焼の新たな可能性を切り開いたともいえます。大正時代から昭和初期にかけて、この技法はさらに進化し、多くの陶工たちによって磨かれました。

九谷焼 青粒

技法と特徴

青粒技法の核心は、その緻密さと技術の正確さにあります。この技法では、「いっちん」と呼ばれる道具を使用して、極小の粒を一つ一つ丁寧に器面に打ち込んでいきます。これらの粒は緑(青)色が一般的ですが、作品によっては他の色彩が使われることもあります。粒の大きさや間隔を均一に保つことが求められるため、職人には高度な技術と集中力が必要とされます。

また、青粒技法には「渦打ち」と「鱗打ち」といった、特定の技法があり、これらを組み合わせることで作品に独特のテクスチャと立体感が生まれます。「渦打ち」は粒を密集して配置し、渦状のパターンを作り出す技法で、「鱗打ち」はより規則的に粒を配置し、鱗のような質感を生み出します。これらの技法によって、青粒の作品はまるで生きているかのような動きを持つように見えることがあります。

美しさと価値

青粒技法で作られた作品は、その緻密さと独特の質感から、九谷焼の中でも高い人気を誇ります。青粒が生み出す細かな点描のような効果は、光の当たり方や角度によって微妙に変化し、見る者に様々な印象を与えます。このような視覚的効果は、青粒技法がもたらす芸術的価値の一つであり、その美しさは見る者を魅了します。

また、青粒の技法はその難易度から限られた陶工のみが扱うことができ、作品の制作には長い時間と労力が必要です。そのため、青粒を専門に絵付する職人は数少なく、作品は非常に貴重となり、コレクターや愛好家からも高い評価を受けています。

九谷焼 光崖窯

まとめ

青粒技法は、九谷焼の中でも高度な技術と緻密さを要求する手法です。その独特の美しさと質感は、職人が長年修練して得た技巧の結晶であり、見る者に感動を与えます。この技法がもたらす作品は、九谷焼の伝統を受け継ぎながらも新しい美を追求し続ける姿勢を象徴しています。青粒の作品は、今後も九谷焼の中で特別な地位を保ち続けることでしょう。

青粒の品物は大志窯もある「九谷陶芸村」のお店に点在しています。

ぜひお越しください。https://www.city.nomi.ishikawa.jp/www/contents/1554432056038/index.html

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